トラブル対処
撤退ライン。伊豆で「ガーガー」鳴り出した日に、僕が見積もりを取らなかった理由
2024年7月、家族で伊豆に旅行に行きました。海沿いのドライブロードを走っていたときです。
なんの前触れもなく、「ガーガー」という大きな音が鳴り始めました。
うるさい、なんて生易しいものではありません。しかも鳴り止まない。妻は完全に怖がっていました。場所も悪くて、山の中なので電波すら入りません。
そのとき僕が思ったのは、ひとつだけでした。「ついに来たか」
慌てなかったのは、線を引いてあったから
パニックにならなかった理由は単純です。この車がいつか終わることを、最初から織り込んでいたからでした。
走行9万kmで買って、そのときは15万kmを超えていました。あと何年・何万km走れそうかは見立ててありましたし、そろそろ終盤だという感覚もあった。だから「なぜ今」ではなく「ついに来たか」だったわけです。
現場でやったことは3つ。
まず、バッテリーの警告灯が点いていないのを確認しました。ということは、発電自体はできている。次にニュートラルで坂を下って、少しでも負担を減らします。そして熱海駅まで家族を送り届けて、新幹線で先に帰ってもらいました。
僕はそこから小田原厚木道路と東名を通って、自走で帰っています。レッカーは呼んでいません。エンジンだけは絶対に止めない。 それだけに気を使いながらの帰り道でした。
いま書いていて「よく走ったな」と思いますが、あのときは意外と冷静だった気がします。
見積もりを取らなかった理由
翌日、GoogleMapで家からいちばん近い整備工場を探して持ち込みました。社長はエンジンルームを覗いて、あっさり言います。
「オルタネーターだろうねえ」
そして続けて、**「エンジンを降ろす形になるかも」**と。
僕はそこで、見積もりを取るのをやめました。
修理代がいくらかは、いまも知りません。聞く前に、答えのほうが先に出ていたからです。エンジンを降ろす作業になるなら、費用は確実に大きい。一方この車は、下取りに出しても数万円という段階でした。どちらに転んでも、直すより次の中古に乗り換えたほうがいい。
だから僕はこれを、経済的全損と考えることにしました。車としてはまだ走ります。でもお金の計算としては、もう終わっている。この線引きが、撤退ラインです。
ちなみに妻は異音の一件で完全に怖がっていたので、買い替えへの反対はゼロでした。家庭内の合意形成という意味でも、あの「ガーガー」はいい仕事をしてくれたと思います。
撤退ラインは、3つ並べれば決まります
僕がやったのは、感覚としてはこの3つを並べる作業でした。
- 修理費 vs いまの下取り価格 — 修理費が残存価値を大きく超えるなら、直す理屈は立ちません
- 直したあと、あと何年・何万km走れるか — 直しても残りが短ければ、その出費は回収できない
- 次の車の乗り出し予算 — 買い替えに必要な総額と、延命にかかるコストを比べます
僕の目安はシンプルです。一度の修理費が「次に買う足車の乗り出し予算」に対して無視できない大きさになり、しかも残耐用が短いなら、直さずに売る。 逆に残りが十分あって、修理が一過性のものなら直します。
大事なのは、この線をトラブルが起きる前に引いておくこと。見積もりを突きつけられてから初めて考えると、たいてい感情が判断を乗っ取ります。「せっかくここまで乗ったし」で泥沼にはまるか、慌てて足元を見られて売るか。だいたいそのどちらかですよね。
5万円は、安いのでしょうか
結局そのヴォクシーは、下取り5万円で引き取られていきました。
安いと思いますか。僕は思いませんでした。**「よく頑張って走ってくれたな」**という感想のほうが、先に来たんです。48万円で買って、6万2千km走って、最後に5万円で引き取ってもらえた。1kmあたり6.9円です。
鉄くずとしてちゃんとリサイクルされるなら、それでいい。手放す日に写真を撮るとか、そういうことは何もしていません。
ただ、ひとつだけ正直に書いておきます。5万円で済んだのは、価値がほぼ残らない状態まで乗り切ったからです。撤退ラインをもう少し手前に引いていれば、まだ値が付くうちに売れたはずですよね。
故障した車や、走行10万kmを超えた車を買い取る業者もあります。僕はあのとき下取りに出しただけで、ほかとは比べていません。使ったことも、まだありません。
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どちらが得かは、状況によります。使い切るのも正解ですし、価値が残るうちに次へ渡すのも正解。大事なのは、どちらを選ぶかを自分で決めていることだと思います。そのためには、日ごろから自分の車のだいたいの相場を知っておくと、いざというときに慌てずに済みます。
いまの車の撤退ラインは、どこか
参考までに、いま乗っているセレナについて僕が置いている線も書いておきますね。
事故で全損したとき。乗る必要がなくなったとき(海外に移住するとか)。そしてエンジンをオーバーホールしなければならないような、とんでもない修理費がかかるときです。
いまのところ故障らしい故障は、子どもが2列目のシートベルトの受け口に、おもちゃとお菓子を詰めすぎて壊した一件くらい。あれはディーラーで直してもらいました。撤退ラインを心配するより先に、子どもの所業を心配したほうがいいのかもしれません。
「ガーガー」が鳴り出す日は、中古に乗っていればいつか来ます。でも来ると分かっているなら、慌てる必要はないんですよね。線を引いておけばそれは事故ではなく、予定していた分岐のひとつになります。